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ドイツと日本、往復しながら考えた。さて、どっち向かって歩いて行こうか。


by Rottenmeier-ffm

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ムンク展

今年に入ってからずっと気になっていたムンク展。
フランクフルトSchirn美術館にて開催中。
ムンク展_c0180339_17451481.jpg

実は今週末で終了と聞いていたのであわてて行ってきたのです。が、会期延長で5月28日までやるとのこと。

5月2日にムンクの「叫び」の一つが売りに出され、史上最高値を付け落とされたとか。
何かと話題のせいか、金曜日の午前中、平日をわざわざ選んでいったにもかかわらず、美術館は結構混みあっていました。
ムンク展_c0180339_1745497.jpg

「叫び」は来ていませんでしたが、(もしかしたらまだポンピドゥーに貸し出し中か?)「病める子」や「接吻」や「思春期」等の代表作も来ており、大変見ごたえのある美術展でした。

今回2時間以上かけてじっくり回ったこともあり、(ドイツ語しかなかったけれど、ガイドテープも借りてみた。)ムンクという画家に対し私はこれまで誤った印象を持っていた、ということに気付かされました。

私のこれまでのエドヴァルド・ムンク画伯 に対する印象

19世紀末から20世紀にかけての激動の時代を太く短く駆け抜けた画家。
自殺したか、精神を病んで病死をしたか、とにかく薄命な人。
死後作品が評価されたが生前は何かと苦労した。
早くに家族を亡くし、孤独で、精神的に不安定な人だった。


すみません。ムンクさん。表現主義の画家に括られたことがこういう大きな誤解を招いたのです。
というか、明らかに誰か、例えばゴーギャン、ゴッホ、ココシュカ、モディリアニ あたりとごっちゃになってます。

ちなみに本当のムンクさんは

81歳まで長生きされています。この時代なら大往生と言えますでしょう。
2度ノルウェーの勲章を授受されていらっしゃる。
つまり、生前からすでにノルウェーの国民的英雄として名声も富も十二分に得ていた。

確かに、若き日には恋人と発砲騒ぎをおこしている。(←自殺未遂と勘違いしていた。)
そして精神的な病にはかかっていて療養もしていた。

しかし、あの、ノルウェーにアトリエを構え、精力的に絵を描きまくっていた、(死後オスロ市に寄贈された絵画点数は半端なかった。)事を考えると、精神的に病んでしまうのもしょうがないですよ。
ノルウェーの冬は長く暗い。夏もドイツよりもさらに短く、良いお天気の日と言うのは本当に1年の内数えるほどしかない。芸術的活動を行う環境としては、良くも悪くも自分の内面に深く入り込まざる得ない環境だと思います。
つまり、精神的に健全なノルウェーの芸術家は存在するのは難しい。まあムンク氏が多少精神的な病にかかっておられたとしても、ある意味想定内。(無責任な言い方ですが。)

ムンク氏は19歳の時、その頃おそらく流行の最先端であったカメラと出会います。
今回美術展で初めて知ったのですが、ムンク氏は自画像を写真で山ほど残されています。
そして同じく、19世紀末、20世紀初頭の最新テクノロジーである映画にも多大な興味を持たれたとのこと。
結構、「新しもん好き。」 そして「ナルちゃん」でいらっしゃった。

薄幸で薄命な印象はきれいさっぱり消え去りました。

今回、ムンクの絵を見て第一印象は

「あれ?こんなに洗練された絵だったっけ?」

でした。(すみません。傲岸不遜で。しかし美術展に来る一般客の心の中なんてこんなもんですって。)

色遣い、何より抽象化されたフォルム、がとても「洗練された、というか、洒落た」印象だったのです。

「橋の上にたむろっている少女達の絵」(すみません正確な題名忘れました)を何年か振りに目にして、背景の処理、色使い、全てが
「ああ、これ以上足しても引いてもだめだ。これで完璧だ。」
と言う感じがしました。

ムンクの絵は抽象的で筆のタッチは荒い方だし、キャンバスに塗り残しがあったり、描き込んで仕上げたようには見えないタイプの絵ですが、今回私に強く残った印象は
「完成度高いなあー。」 でした。(←何様?)

何枚も、しかも何年もかけて同じテーマを繰り返し描いていますが、若い時に描いたものもすでに「完璧」。
まあ、素人の私の印象ですし、学術的根拠はありませんが、生前に名声を得るだけの有無を言わさぬ「技術と実力」の持ち主でいらっしゃったと言うことは確かですな。

そして、映画大好きだったらしく、映画の一場面を切り取ったような作品もあります。
道端に死体が転がっている絵について私は以前なら、「うむ、これはムンクの精神世界を表現されているに違いない。」とか、変に深読みしたと思いますが、
今回この絵は「舞台芸術や映画に影響された絵画シリーズ」と言うようなコーナー展開されていたところにありましたから、
「ああ、なるほど、映画のドラマティックな演出に影響されたのだな。」と、素直に思いました。

エドヴァルド・ムンク 
暗くて重い精神世界を描いた画家。
展示会に行った後、ちょっと気分が重くなりそうだし。とか思われていらっしゃる方。

そんなこと無いですよ。

ムンクさん、生前は結構普通の人だったと思います。

まあ、確かに狂気を感じさせる作品もありますが、全ての作品が見る人を不安にさせたり、深く内省させたりするわけではありません。

「美しい」と言うことばがあてはまる絵をたくさん鑑賞することができる美術展でした。
ムンク展_c0180339_17461260.jpg




by Rottenmeier-ffm | 2012-05-13 00:02 | ドイツ生活 | Comments(4)
Commented at 2012-05-13 00:45 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by みき at 2012-05-13 20:09 x
最近は焦点を絞った展覧会が多くなって、じっくりと画家を見つめる機会が増えましたよね。
私はムンクの絵はまるで知らないので、ロッテンマイヤーさんの記事を読んで、観てみたいと思いました。
Commented by Rottenmeier-ffm at 2012-05-14 17:58
tensanそれはきっと今までずっと運動してきた蓄積があったからですよ。しかししばらくするとその蓄積も使い果たしてしまいますからお気をつけて。ほんと、この年になると体重減らないわ。
Commented by Rottenmeier-ffm at 2012-05-14 18:00
みきさん、ありがとうございます。良い企画展が増えてきましたよね。特にヨーロッパ内では本物をきちんと集めてくれるので見ごたえがあります。
ムンク、いいですよ。機会があったらぜひ。オスロにはムンク美術館があります。

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