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ドイツと日本、往復しながら考えた。さて、どっち向かって歩いて行こうか。


by Rottenmeier-ffm

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これからの製造業1

ヨーロッパと日本間のビジネスに携わるようになって、早20年余、
(え、まじっ? えっと。。計算してみる。・・・合ってるわ。)

まず最初に思ったのが、ヨーロッパの家庭用品業界のメーカーって、思ったより小規模なんだな。という印象を持ちました。

もちろん20年前と今では大きく事情も変わります。
これからの製造業1_c0180339_1735810.jpg

ヨーロッパの製造メーカーは1990年代あたりからどんどん東欧、そしてアジアに工場を移し、自社工場で作ることをあきらめ始めました。

大幅な人員削減もあり、それでも生き残った企業が現在に至る。

ですから、最近は製造工場(Manufacture) といえども、機械や設備を持っているかどうか(持っていてもそれが稼動しているかどうか)は問われません。
これからの製造業1_c0180339_17352675.jpg

どちらかと言うと 「企画・デザイン」 「ロジスティックス」 としての役割が大きい。

たとえば、
製品を企画、デザインし、アジアの工場に発注。
  ↓
生産管理を行う。
  ↓
ロジスティックス全般管理を行う。
  ↓
販売管理を行う。

このあたりがヨーロッパの中小製造業のメインの仕事になっていると思われます。

そしてヨーロッパに結構存在するのが零細製造業。
つまり、
「デザイナーが企画、デザインし、自分で工場を見つけ製造委託をして製品を作る。」
そして倉庫にストックして販売する。

こんな風に何もかも自分たちでやっちゃう小さなデザイン会社がたくさんありました。
今も健在で、どんどん大きくなっている会社もあります。
しかし、いつの間にか消えている会社も多いですね。さすがに。
こういった会社が作る面白いものがあるから、ヨーロッパの製品は評価されてきたのに。

製造業でたぶん一番難しいのは、「コスト」計算。

販売価格が最終いくらになるのか、それを考慮して原価を出さなければなりません。
そして、残念ながら現在の流通経路に乗った販売方法だと、製造原価から出した最終販売価格はとんでもなく高くなることが多いのです。

なぜか。それから、――何に比べて高いのか?

アジアの工場で製造を委託すると、素材にもよりますが、いわゆるリーズナブルな価格を出すためには、初回ロットは数万個から数十万個のオーダーが必要になります。

今時、新製品で数万個確実に売れる製品なんて早々出てくるもんじゃ有りません。
そうすると
ヨーロッパ域内にある工場で数千個の初回ロットで作るという現実的な選択を考える。

しかし、アジアの工場の10万個一気に作る場合の一個あたりの価格と 近所の工場で数千個作る場合の一個当たりの価格で差が大きすぎるんです。

下手をすると原価、ここの部分で5-10倍の価格の差が出てきます。

工場出し価格が10倍違うと、販売価格ではもっと差がつく可能性があります。
つまり小売価格が一方は10ユーロ。もう一方は最低でも100ユーロかもしくはもっと、--ぐらいの差になってくるんですよ。(普通の値段のつけ方をすると。)

こうなると製品のカテゴリー自体が変わってきてしまう。
売るお店も、客層も。 

・・・もともとの製品企画は同じであっても、です。

面白いアイデアがあってもそれを製品にするのが30年前より格段にむずかしくなっていると思います。

これは、製造工場の技術が問題なのではなく、消費者の方が問題だと思います。

アジアで大量に作られた安い製品が基準価格になってしまっている現状。

例えばステンレスのお鍋。 680円の物も12000円の物もあります。
どちらかというと680円や980円の方が普通の価格と思っていませんか?

私もそう思います。

しかし、ヨーロッパの工場でオリジナルのお鍋を2000個作ってもらったら、特別な技術が必要では無くてもたぶん小売価格を6000―8000円ぐらいに想定しないと誰も儲からない。
小売価格が980円のステンレスのお鍋を作ろうと思ったら数十万個一気に発注できる資金力と同時に売り先が必要なのです。

おそらく戦前辺りでは、日用生活品は生活費に比べてそれなりの価格だったと思います。
だからちゃんと長い間使った。作る方も長く使ってもらえる物をきちんと手間暇かけて作った。
その価格が、今ならステンレスのお鍋8000円に相当するのではないかと思います。

土台、980円のステンレスのお鍋はかなりあちこち無理しながら作られたものなのです。
ただ、いろいろな人が無理をして努力して作り上げた価格は物の価値から比べて確かに安い。良いものなのです。
だから売れる。
そしてみんな980円を基準に8000円の鍋が高いと思う。

製造現場を見ていると、どれだけオートメーション化されていたとしても、所詮家庭用品の工場なんかは人出が必要です。それなりに手がかかっている。
やっぱり本来はある程度の価格になる物なのです。

しかしながら980円の鍋と8000円の鍋と10倍近い機能の差があるかというと、「無い」、です。
歴然とした違いを見つけることは出来ても基本の機能は変わらない。
10倍近い価格の差の理由をどうやって納得させるのか。

これは買い側も作る側も双方に必要な理由です。
ブランド力や宣伝広告に頼っても、埋め切れない価格の差。

やっぱり日用品、家庭用品っておそらくここ数百年で現在が一番安いのではないかしら。
陶磁器が王侯貴族しか持てなかった数百年前の例を引くまでも無く、

原料や技術がこれほど安くなってしまったのは果たして良かったのか?

人々の意識改革が必要なのかもしれません。

でなければ製造業が発展できない。
物を作り出す喜びが評価されない時代は不幸です。
経済効果重視の文明の行き詰まりの現れなのか。

すみません。興味の無い人にはわからん内容のことを書いてしまいました。頭を整理するのに文章にするといいかしら、と思いまして。
しかし、まだいろいろ思うことはあるんですよ。






by Rottenmeier-ffm | 2012-04-22 01:46 | ビジネス私見 | Comments(4)
Commented by mai at 2012-04-22 09:50 x
いや、ものすごく面白かったです、物作りだけじゃない部分もある、そう思いました。とても参考になりました...さすが20年(オイ
でも、海外が長いと、色々と見方が日本人とは違うなぁと思うこの頃...どっちがいいとかじゃなく、単純に、西と東はメンタルがこうも違うのか、です。私達みたいなのは複雑で、上手く機能すればものすごくいい←ビジネスに限らず、のにな〜、とも。(って、まるで機械みたいなw)
Commented by つぐみ at 2012-04-22 11:46 x
お久しぶりです~。売る側としても、買う側としても考えさせられる内容でした。なんだか今の商品経済の縮図を聞いているような感覚で、特に買う側としてはたくさんの矛盾点を抱えている気がします。「いいもの」で「安いもの」が存在しにくいのは分かっている、「後世に残したいもの」はあるのに目先の損得を計算してしまう。大事に物を使いたいのに消費社会に踊らされ、「断捨離」なんて言葉に踊らされる。そういう面ではやっぱりヨーロッパの人を相手にするより、東欧系の人を相手にするほうが売る側としては楽でもあり、苦でもあり、、、。(どっちやねん)。売る側のモラルも問われる問題ですね。
Commented by Rottenmeier-ffm at 2012-04-23 15:55
maiさん、製造業ってビジネスの大元ですから全てに影響があるのですよね。私が製造業と販売業の間で商売をしているので両方から少し距離を置いてみることができるのです。何かの参考になればうれしいです。
Commented by Rottenmeier-ffm at 2012-04-23 16:00
つぐみさん、お久しぶりです。いま、いろいろと変化が起こっている最中だと思います。これからしばらく製造業を中心に私の現在の大きなビジネスの流れについて考えを書いてみます。その後、流通、つまりロジスティックスから販売までの流れについて書こうかとも思っています。ご感想、歓迎します。

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