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ドイツと日本、往復しながら考えた。さて、どっち向かって歩いて行こうか。


by Rottenmeier-ffm

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民芸と工芸

民芸品と工芸品の差とは何でしょう。
民芸と工芸_c0180339_11205210.jpg

なぜこんな小難しいことを考えているかと言うと、日本の良いものをヨーロッパに輸出したいと考えているからで、同じことを考えた人なら、ここに一度は引っかかっていらっしゃると思われます。

漆、陶芸、染色、織物、木工細工、皮細工、ガラス細工、などなど
どの地域にも何かしら「特産品」みたいなものがありますよね。

伝統工芸は、法律的には通産省認定の産地で工芸士資格保持者が作った物という定義がある。広義では日常民具の域を超越した、技巧的な産品という意味の工芸品。
民芸品は日常民具の範囲内で、美術的価値を持っていてはいけないとされている。


民芸運動の柳宗悦氏の定義が↑らしいのですが、この定義によると伝統工芸品はお殿様やお公家様向きのいわゆる一品物、不必要だけど美しい意匠を凝らし、ーたとえばお弁当箱でも漆に金箔象嵌仕上げー、みたいなぜいたく品、そして芸術品に近いもの、ということなんでしょうか。

もっと平たく言うと、ギャラリーで展示即売されるもの。

民芸品はお弁当箱でも、たとえば木の素材を生かして、ご飯をおいしく保存できるとか、機能に工夫がある一般人が使うもの。

つまり、デパートの家庭用品売り場もしくは各県の物産展で買えるもの。

経済産業省のお役人の方々がいま海外で展開されているクールジャパンの対象になっているのは多分、伝統工芸と民芸品がごちゃごちゃになっている気がする。

いや、製造しているご当人もイマイチ分かっていないのか。

伝統工芸品を輸出するのは多分無理です。

これは芸術作品として扱われないと、まず、値段が合いません。

で、民芸品なんですけど、良いものはたくさんあります。
しかし、
1万円近い値段を払っても曲げわっぱのお弁当箱が欲しいと思うのは世界広しといえども日本人だけです。

民芸品を日用品と位置付けるなら、民芸品を作っている人たちはもっと工夫して日用品にふさわしい値段で売れるよう努力しなければならないと思います。

伝統的な作り方を踏襲し、職人の技巧、技術を磨くのは素晴らしい。

しかし、同じことを機械でできなかったのか?もっと簡単に誰でもできる工夫がなかったのか?

職人個人個人の自己研鑽に励みすぎたおかげで、日本の民芸品は手工業にとどまってしまいました。
いえ、だから良いところもあるのです。

しかし、手作りの良さを訴えて、マニアックな良さを売り物にできるのはごく限られたものになります。

日用品に払える金額は世界各国ある程度限られていますから。日本の民芸品はその限界をはるかに超えた価格になっています。

その割には日本には何千、何万という工房があり、何万人もの人製造に携わっている。

ヨーロッパに目を向けてみると、民芸品がそれほどたくさん残っているかと言われると・・・NOです。

伝統工芸品と民芸品の間ぐらいに、マイセン、KPMなどの高級磁器食器ブランドがあるのでしょう。
ヨーロッパの伝統工芸品なんて一国に10ぐらいあれば多い方ではないですか?
(いや、わたしの知るかぎり、ですが、)

日本のように何千もあるわけではありません。

そして、かなりの数日本の小さな地方の工房は政府からの補助金で何とかやりくりをしているらしいのです。(聞いた話で恐縮です。)

伝統的な手法や技術が消えてしまうのはもったいなすぎる。という意見には賛成。
しかし、ビジネスは厳しい。その技術が時代に必要とされているのかどうかというかなり厳しいテストを日本の民芸品、伝統工芸品はも逃れてきているような気がしてならないのです。

伝統を守り抜く。改革して前に進む。

日本国内でしか評価されない物、技術がこれほどたくさんあるというのは国として誇るべきことなんでしょう。

しかし、現在日本の製品を輸出することを考える私としてはとても複雑な気持ちになるのです。

日本人にしか分からない価値というものを輸出する意味。守ろうとする意味。

世界の人々が共通に良いと思われるものに特定して輸出を促進したほうが、やっぱりいいのかしら。

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by Rottenmeier-ffm | 2012-03-17 11:27 | ビジネス私見 | Comments(2)
Commented by phary at 2012-03-19 04:20 x
<これは芸術作品として扱われないと、まず、値段が合いません。>
実は前回の帰国のときにおねえちゃんと行った東京近郊のひなびた温泉地で偶然地元のプロ半プロの芸術家(ご本人たちは趣味ですとおっしゃっていましたが)たちの古い民家を使っての展示会って言うのかしら、そういうのに行って一目ぼれした照明作家さん(そういういい方しますか?)がいるんです。作品があまりに素敵でおねえちゃんと二人で会社を作って本気でヨーロッパに輸出しようと思いました。でも、ノウハウがわからないし、ご本人も「趣味だから価格は、、、」っておっしゃるし、そういうのはたぶん芸術品となるわけで(自然の木や枝を使った照明なので二つとして同じものは出来ない)お値段をつけようがないって言うか、、、輸出したとして輸出方法とか保管とか販売をどうするかとか何もわかっていなくてそういうところ、まったくの素人なので結局あきらめたのです。(でもおねえちゃんは「いつか、、、」と思ったらしく、名詞だけはいただいていました)
Rottenmeierさんのような商売の知識があったらなぁとあのときほど思ったことはありません。まぁ、夢のような話です。
Commented by Rottenmeier-ffm at 2012-03-19 17:19
pharyさん、工芸品は商売にするのがとても難しいです。ギャラリーのように、作品として展示即売するのが一番良いと思われますが、作家さんのものは量産できませんしね。良いものはたくさんあるのに歯がゆい思いをする今日この頃です。

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